2004年12月15日

書評:フロー体験 喜びの現象学

『フロー体験 喜びの現象学』(M.チクセントミハイ、世界思想社)

フロー体験とは何か。「注意が自由に個人の目標達成のために投射されている状態」とされる。それは心理的エントロピー(無秩序)とは反対であり、最適経験とも呼ばれている。この状態、経験こそが人間に楽しさを感じさせるのだという。

フロー体験は自分の能力にみあった目的のある活動をしているときに訪れる。テニス、チェス、ロッククライミング、読書、仕事、セックス、グルメ、芸術の創作、知的活動なんであれフロー体験は得られる。

著者はテレビを見るような受身の活動は楽しくないという。フロー体験はそれを体験することで進歩したり本人が複雑化するものだからだ。そういう意味では上にあげた活動も種類によってはあるいはかかわり方によってはすぐにチャレンジングではなくなり、ただの快楽活動や暇つぶしに過ぎなくなる。

また著者は人生を大きな目的の元に統合する必要を説いているが、これはなかなか難しい。あくまでも理想だろう。

フローを体験するだけの能力があったとしても、「何をやっても変わんねえよ」的な無気力ってやってくると思う。人間はより大きな視点で人生を眺めてしまうものだ。「そんなに頑張ってもねえ」みたいな感覚のない人はよほどおめでたいと思う。

この問題にたいして本書はより大きな目標を持つことを説き、トランスパーソナル心理学的な抽象的な希望の言葉で締めくくっている。しかし、ニヒリズムとの戦いはそう簡単には決着はつかないだろう。

平凡のような卓見のような不思議な一冊だった。過去の知見の統合という意味ではあたり前で平凡。それをしっかり調査して纏め上げたという意味ではなかなかのものだ。私は面白く読んだ。

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