東京都写真美術館でやっている『 「明日を夢見て」〜アメリカ社会を動かした ソーシャル・ドキュメンタリー』を見てきた。
おもにアメリカ社会の影の部分である貧困をとらえたドキュメンタリー写真を集めている。素晴らしい写真展だった。
ジェイコブ・リースがとらえたニューヨークで暮らすヨーロッパ人移民たちの貧困にあえぐ姿。
ルイス・ハインがとらえた過酷な児童労働の実態。
ウォーカー・エヴァンズ、ドロシア・ラング、ベン・シャーンが記録した農民の惨状。
ここまでの内容はもう圧巻。一番手のジェイコブ・リースから写真の写実性、記録性による写真の力をまざまざをみせつける。写真家の技量の高さは言うまでもないが、写真の特性がよく生かされている。
意外だったのはルイス・ハインという写真家がうますぎること。美的センスがあるので、悲惨な児童の写真に美がやどっている。ドキュメンタリーという枠をはずしても十分成り立つ写真がいくつもあった。
ウォーカー・エヴァンズのきびしい視線の中にある物質的美意識。ドロシア・ラングの悲惨のポエジー、ベン・シャーンの生き生きとしたスナップ技術もなかなかのもの。写真集でしか見たことがない名作を直接見られた感激もある。
ここまでが主な内容か。あとはベレニス・アボットが摩天楼などを写した『変わりゆくニューヨーク』、写真家集団『フォトリーグ』によるソーシャル・ドキュメンタリーのいろいろな写真があった。アボットは好きだけど、貧困写真の後に見ると迫力がなくなってしまう。
すごいお薦め。
タイトルの「明日を夢見て」は内容に合っていない。その後、状況が改善されたとしても被写体になったひとたちは悲惨の中に死んでいった人が多いはずだ。