
17世紀のオランダの画家、ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer)の生涯と作品の解説、フェルメール作品の数奇な運命について書いた本だ。つまり概説書。過去の論点について著者の意見が述べてあるので、「謎解き」とタイトルにつけてあるが、さほどの謎解きはされていない。
ただし、内容はコンパクトにまとまっているし、カメラ・オブスキュラ問題、贋作事件、盗難事件についてふれているので、まず一冊読みたいときにはこの本で間に合いそうだ。そういう意味でお薦めできる。
私にとっての一番の関心は、カメラ・オブスキュラ問題だ。カメラ・オブスキュラとは現在のカメラの前身となる装置のことで、これが写す画像をなぞることで絵を描いたのではないかという疑いのことだ。いくらカメラを使おうが、絵にする技量は必要なわけで、そのことですぐさまフェルメールが下手ということにはならないが、これを使ったかどうかはやはり大問題であることは間違いない。
フェルメールがカメラ・オブスキュラの画像をなぞったかどうかはわからないにしても、彼がカメラレンズの描写の影響を受けているのは間違いないのではないだろうか。ハイライト部分のにじみなんかはいかにも古いレンズの写真っぽい印象を与えるし、白い点が見えるのもカメラ・オブスキュラの特徴だと美の巨人たちで説明していたと思う。
著者は必死にカメラ・オブスキュラ問題を否定しているが、そんなことに精力を注ぐよりもレンズの影響を絵に見つけて作品批評をしていく方が面白いだろうと私などは思ってしまう。写真を趣味とするものの好奇心だろうか。
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