2005年01月20日

書評:なぜ高くても買ってしまうのか

『なぜ高くても買ってしまうのか 売れる贅沢品は「4つの感情スペース」を満たす』(マイケル・J.シルバースタイン, ニール・フィスク, ジョン・ブットン、ダイヤモンド社)

ワンランク上の贅沢(ぜいたく)品が売れている。かつてのような超高級品ではなく、最近一段と安くなった低価格品とも違う。たんにその中間価格帯でもない。それは心理的な4つの要因のいずれかを満たす新しいタイプの高級な商品であるという。著者はそういう商品をニューラグジュアリー商品と呼んでいる。

このニューラグジュアリー商品は消費者の4つの感情スペースのいずれかを満たす。その感情スペースとは「自分を大切にする」「人とのつながり」「探求する」「独特のスタイル」だ。こういう商品に対してなら、消費者は喜んで多くのお金を支払うという。

別の言い方をすれば、これらのニューラグジュアリー商品を消費することで、人々は自分のさみしさを埋めたり、アイデンティティを得たり、自己表現していると感じている、とも言える。本来は消費に求めるべきことではないことを消費に求めているのだから、どこか倒錯しているのだ。ニューラグジュアリー市場の拡大にはどこか病理的な側面があるように私は思う。

ニューラグジュアリー商品が売れる背景には消費者の可処分所得の増加がある。つまり所得の増加により人々がより裕福になったということだ。本書ではほとんど触れられていないが、それにともなってアメリカ全体にストレスの高い労働環境がひろがっていることは言うまでもない。

さらに重要なのは、可処分所得の増加には初婚年齢の遅れや離婚の増加によって単身者が増えたこと、出生率の低下により扶養家族としての子どもの減少という要因も含まれていることだ。つまり、ひとりで生きること、もしくは養う家族が減ることで、自分のためにお金が使える人が増えているという背景がある。これらがさきほどの感情スペースと容易に結びつくだろうことは誰にでも想像できる。

本書はマーケティングの本だから、心理的な考察はあまり行っていない。人気商品がいかに開発されたかを記述することにページを割いている。それは当然であって批判の対象にはならない。

しかし、私が関心を持ってしまうのは、ニューラグジュアリー商品の心理面。あえて言えばその病理性だ。今後はそのあたりの本を探してみたいと思った。すでに読んだ本から一冊あげるとしたら、『豊かさの精神病理』がある。関心のある方は読まれたい。

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