2005年05月11日

書評:日和下駄/永井荷風

『日和下駄―一名東京散策記』(著者:永井荷風,出版社:講談社文芸文庫)

上には講談社文芸文庫へのリンクを張ってあるが、私は1993年発行の『荷風全集第11巻』で読んだ。

表通りの近代化、偽の西洋風の街並みへの変貌を嫌っていた永井荷風はさびれた路地へ入り、空地や崖を鑑賞し、風情のある橋上で佇む。洋行帰りであることがかえって、荷風の心に消え行く日本さへの激しい憧れを呼び起こすようだ。

金のかからない暇つぶしとして散歩を選んだ荷風は歩きながら近代への批判を強め、日本の風景に対する愛着を確認していたようだ。このエッセイをつらぬく感情はそこにある。とりわけ醜く変貌していく日本の近代的風景への皮肉な視線が印象深い。

底辺の人々への共感もあるかのように見えるが、同時にそこには冷ややかな視線もある。金持ちの放蕩息子が貧乏人の生活を高みから鑑賞するような描写が気になった。

荷風という人は別に人格者でもないし、社会の理想を声高に語るわけでもない。その社会観は退歩的であり(本人は退歩的じゃないと書いている)、女性への視線は差別的だとの批判もある。貧乏な下層民への視線も共感的というよりもおのれの趣味を満足させるだけの高みの見物ではないかという批判もまぬがれないだろう。しかし、そういうほめられたものではない面もふくめて、この変人の面白さに共感できるかどうかが荷風を好きになれるかどうかの分かれ目だ。

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この記事へのコメント
■投稿者:jiji at 2005年05月11日 18:59
今度読んでみます。
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■投稿者:Cozy at 2005年05月12日 12:44
荷風って実際に会うといやなジジイでしょうけど、
随筆はけっこう面白いです。
ぜひ。
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