2005年05月18日

書評:知って安心 男の更年期/横山博美

『知って安心 男の更年期』(著者:横山博美,出版社:講談社)

男の更年期には精神的な原因で起こるミッドライフ・クライシスと肉体的な原因で起こる本来の更年期の二種類がある。この本でおもに扱っているのは後者の肉体的な更年期。その二大原因は男性ホルモンの低下と前立腺肥大だという。

その症状の現われ方と治療法の解説が本書のメインだ。男性ホルモンの投与、漢方療法、前立腺への温熱療法などをおこなえば治ると言う。だから、いろいろ不調を感じることがあっても悲観することはない。

一般向けの医学書なので当然だが、本書では、仕事でも性においてもバリバリ元気であることをよしとしている。しかし、私は別のことを考えてしまった。

いい年になっているのにバイアグラを使ってまで性生活を元気にしなくてもいいんじゃないだろうか。仕事ばかりの生活を反省し、競争社会から身を引くのも悪くない選択だ。性格から猛々しさが消えて、性的な面でも枯れていくのも、人生の後半にふさわしいのではないだろうか。

インド思想のヴェーダには人生を4つに分ける四住期という考えがある。勉学の「学生期」、家族を養う「家長期」を経て、家を離れて森林の中で瞑想修行をする「林住期」、最後は死に場所を求め、放浪と巡礼の旅に出る「遊行期」となる。

むろんこれは宗教思想であるが、人間が肉体的に枯れるのは本来の姿なのだから、それに素直に従っていく生き方も視野に入れた治療もあるのではないだろうか。「私はつらい症状だけを治してもらえば十分です、あとは受け入れて枯れて行きます」と患者がいい。医者も患者を穏やかな隠居生活へと送り出す。

医学にもイデオロギーがある。治療方針にもイデオロギーがあるというべきか。当然、人生観に応じた治療プログラムがあってもいいはずだ。上記のような患者と医師のやり取りが一件でも紹介されていたら、それもまた楽しかっただろう。

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