2005年05月27日

書評:新東京百景 木版画集/恩地孝四郎 他

asakusa.jpg『新東京百景 木版画集』(著者:恩地孝四郎 他,出版社:平凡社)

恩地孝四郎、諏訪兼紀、平塚運一、川上澄夫、深沢索一、藤森靜雄、逸見享、前川千帆の8人の版画家による版画集。

限定330冊。定価12,600円。32cmX33cmのサイズ。ずっしり重い。現在、中古でなければ購入はできない。

(書籍画像なし)
「浅草六区」 by 諏訪兼紀

大正12年の関東大震災により東京は壊滅的な被害を受けた。政府は帝都復興院(後に復興局)を設置し「帝都復興事業」を推進した。これにより東京風景は一変した。江戸情緒の残り町並みは消え、近代建築のビル、整然とした街並み、ネオンサインの繁華街、公園、鉄の橋でできた近代都市東京が生まれた。もっともこれも東京大空襲で消え去るのだが。

昭和3年に東京風景をテーマに上記の8人がグループ展を行なったのをきっかけに、会員向け限定頒布の木版画「新東京風景」として、昭和4年から7年にかけて50部限定で発行されたのが最初の出版だ。私が読んだ平凡社のものは後半に戸板康二の文、桑原甲子雄、師岡宏次の写真で東京風景についてのコラムがついていた。

版画はざっくりとした線で描かれているものが多い。大胆な省略とあまり技巧を要しないベタな色塗り。子どもの版画のように稚拙にも見える。表現的にははやや物足りない。

とはいえ、諏訪兼紀の「浅草六区」、川上澄夫の「銀座」など印象深い作品も含まれていて、けっしてつまらない版画集ではない。昔の風景はこうだったのかと驚く版画も多い。たとえば、明治神宮の表参道はかつてはビルなどのない森の中のだだっぴろい道路にすぎなかった。まさに隔世の感がある。

自分は江戸から東京の版画、写真に関心があるので、この版画集は一度は見ておくべきものだった。昭和の初期にこうした版画が作られていた事実も含めて興味深い作品集だ。

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