2005年09月01日

書評:若者が「社会的弱者」に転落する/宮本みち子

『若者が「社会的弱者」に転落する』(著者:宮本みち子,出版社:洋泉社新書y)


若者がなかなか自立しない、大人にならない。そういう傾向が強まっていると著者は言う。就職、独立、結婚という従来の意味での自立が失われている背景には、労働の高度化および若者が正社員になりにくい雇用形態の変化、依存関係が長期化する親子関係の変化、子育てが苦役化する生活スタイルの変化などがある。そして大人とは何かを定義できない社会心理的状況が拍車をかける。

これらの問題があまり顕在化しない理由は、日本特有の親子関係にある。子どもがパラサイトしたまま家庭の中に囲われてしまっていて、表に問題が出てこないのだ。そんな状況を続けても問題が解決するわけはなく、社会に参画するチャンスが永遠に持てない膨大な層を生むことなるだけだ。

つまり社会全体が若者の自立を妨げ、その問題を隠蔽するように働いているわけで、なかなか解決策が見つけにくい状況であるようだ。

著者の提案は、「教育のコストを本人負担に」、「学生のアルバイトを職業につなげる」、「社会に若者を託すしくみや若者が自分を試す時期をつくる」の3つだ。

これらの提案はそれなりに有効かもしれないが、私としては、ワークシェアリングで若年労働力を吸収し、従来の自立ばかりを目標としない多様な生き方を許容する社会にすればいいと思う。

あわせて大学の講義課目の大幅な変更が必要だろう。アカデミックなものよりも実学的な職業訓練的な要素を増やして、大学を専門学校化すればいい。どうせ純粋に学問をしたくて大学に行っているわけでもないだろうし、明治時代の大学創設の精神からすれば社会で役立つ知識を学ぶことは大学の堕落とはいえないはずだ。

社会ではまるで役に立たない教養主義のために教育費をかけることになる現在の学校の体系はそれこそ社会の無駄というものだ。学校そのものが社会的弱者を育てている面は大きい。大学人の反省を促したい。


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