『日本の写真家19 桑原甲子雄』(岩波書店)を読了。
写真美術館の写真展で見て以来、桑原甲子雄はもっとも好きな写真家の一人だ。
この写真集はもっとも魅力のある昭和10〜12年頃の写真から1980年代までを網羅している。おそらくほとんどが見たことのある写真ばかりなのだが、巻末の「桑原甲子雄 町と自分を見つめる行為」という桑原の言葉を集めた文章が載っているので読む価値はあった。
そこで桑原はリアルな生活感を写したかったという意味のことを繰り返し述べている。なるほどと思う。実際にそういう写真が撮られている。
写真ではやはり初期のものがよい。生き生きとしているし、好奇心をそそるような面白い場面を写している。なんといっても情報量が多い。当時、商店では何が売られていたのか、どんな店構えだったのか、どんな看板や張り紙の広告が出ていたのか、どんな服装の人たちが歩いていたのか。そういうことが1枚の写真にぎゅうぎゅうに押し込まれている。
ただ写真によってできあがりがバラバラだ。ピントがあっていないのかボケているものや急いで撮ったためか半端に傾いているものがある。それもまた臨場感か。
木村伊兵衛はつまらないが、桑原甲子雄はすこぶる面白い。
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