2004年10月19日

安井仲治写真展の感想

Nakaji先週の金曜日に渋谷区松涛美術館で開かれている『生誕百年 安井仲治 写真のすべて』を見てきた。



安井はさまざまなタイプの写真を撮っていた。

わざとボカして絵画調にしたピクトリアリズム写真。当時の流行でただやってみたということか。写真が描写性を捨てることに積極的な意義はないと思われる。

どうということもない被写体をあれこれならべてそのコンポジションや視覚的な面白さを狙った作品が多数あった。これは面白いようなつまらないような。今でもそういう発想の写真はよく撮られるがなんで写真でそれをする必要があるのだろうか?

とにかく全体を見るといろいろなことを試した人だということがわかる。

私が面白く思ったのはスナップ写真だ。

「路傍閑話」では老人が二人、縁側に腰掛けている。そのそばには二匹の犬が伏せている。この写真、やけに力があった。構図や明暗のコントラストも見事だが、老人二人の顔が不気味なほど原日本人。この顔には森山大道のぞっとするような初期作品のテイストがある。

町をちょっと遠めから撮った2枚もよかった。バス停で待つ人々の様子がまるで当時の人間標本のように見える。塔のような建物の前を人々が歩いている写真は不思議な味があった。見慣れない町風景の現実性。

「神は愛なり」と看板が掲げられた教会から太鼓をもって出てくる男の写真。布教活動にでも行くのだろうか。

道をスーツ姿で道の真ん中を颯爽と歩く男、すれ違う和風の女性二人。この写真はとりわけ面白かった。女性は二人とも会釈をしているように見える。当時(1930年代)の男女の街中での態度の違いがよく出ているようだ。この写真の画面右には八卦の看板が見える。

安井仲治のフィルムは戦火で焼けてほとんど残っていないそうだ。今回展示されていたプリントも昔のものがほとんどのようで状態は悪い。もっと他にも面白い作品はあっただろうに、惜しいことをしたものだ。

平日の昼間とはいえ、ほとんど客がいなかったのは寂しい。

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 安井仲治は1903年大阪生まれ。38歳で没する短い生涯に残した作品はさまざまなタイプの写真である。  初期は肖像写真。友人などが写されている。次に、「メーデー」の群集などをとらえたスナップ写真。そして、モノで構成した写真、フォトモンタージュやソラリゼーシ
「生誕百年 安井仲治 写真のすべて」展(渋谷区松涛美術館)【scannersブログ】at 2004年10月21日 12:11