2004年11月05日

書評:レンズの向こうに自分が見える

『レンズの向こうに自分が見える』(野村訓編著、岩波ジュニア新書)

編著者である野村さんは定時制高校でカメラの実習を教える先生だ。カメラ部の顧問もしておられる。

定時制高校にやって来る生徒はさまざまな問題をかかえている。野村さんは彼、彼女らにカメラ部に遊びに来るようにいい、カメラを渡し、その使い方を教える。すると高校生たちは写真撮影を通して、いろいろなことに気づき、自分自身を発見していく。

高校生自身が撮影した写真や手記が掲載されているので、その内面や作品を見比べることができる。これがなかなか興味深いし、感動的だ。外部から観察して、彼女たちは成長しましたよ、と勝手に言っているのとは違う。等身大の女子高生が見えてくる。

登場する生徒に女生徒が多いのは、女性のほうが自分に関係するものを被写体に選ぶ傾向があるので、自己発見につながりやすいのかもしれない。

彼女たちの成長には、写真コンテストに入賞をすることで自信を得るというファクターも大きく関係しているようだ。むしろ入賞できない場合にどうなるのかが気になってくるのだが…。

こういう写真本は他にはない。自己表現が人間にどう影響するのかを見せてくれる意味で、写真本を超えた貴重な記録ではないだろうか。

高校生のフォトメッセージコンテスト…本書に登場する高校生も入賞しているコンテストの一つ。写真も掲載されている。


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この記事へのコメント
■投稿者:tukamoto at 2004年11月06日 11:19
この本がCozyさんに取り上げられて、一読者としてたいへんうれしく思っています。
高校生向けに書かれた?本ですが、大人に対しても十分重い課題が込められていると受けとめました。
著者の野村さんの専攻は人間疎外論だそうです。人間疎外という言葉自体、今ごろあまり耳にすることはありません。それは人間疎外がいっそう進んで一般化したからなのでしょうか。
この本を読んで、野村さんと同じように高校で教えていた梅田卓夫さんの『文章表現400字からのレッスン』(ちくま学芸文庫)の一節を思い出しました。
「生きていることの喜びの根底にあるのは、自分がこの世にかけがえのないものとして存在するという自覚です。まず本人が自覚する。それから他人にもわかってもらう。そのとき私たちは喜びと充実感を持つことができる。文章表現の意味もここにあるのです。」


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■投稿者:Cozy at 2004年11月06日 21:43
コメント、ありがとうございます。

そうですね。今は学校でも会社でも疎外は当たり前に存在しているように思います。

疎外を克服する方法として自己表現は重要ですね。だからblogもこんなに乱立しているのでしょう。苦笑。

気が向きましたら、またコメントをしてください。
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