『
ライカ新時代―ぼくたちのM型ライカ』というムック本に赤城耕一さんのレンズ評が載っている。ここで気になる言葉を見つけた。
「私自身はレンズ描写についてこうしてもっともらしく薀蓄を語りつつも、その描写特性が写真の内容に与える影響というのは基本的にほとんど皆無であると考えている。」
ここで赤城さんはレンズの描写に違いがないといっているわけではない。「内容に与える影響はほとんどない」と言っているのだ。
そもそも写真の内容とは何かと論じはじめるときりがないのだが、過去の名作などをふと思い浮かべて見ると、たしかにレンズのよさとか描写特性などどうでもよいケースがほとんどであることに気がつく。
今、写真美術館に至る壁面には植田正治の妻のいる砂漠の風景、キャパのノルマンディの写真、ドアノーの市役所前のキスが巨大サイズで飾られているが、このどれもがレンズの個性などどうでもいい種類の作品だ。日本の写真史上の最高傑作だろう荒木経惟の
「冬の旅」なんかはコニカのコンパクトカメラ、ビックミニで撮られていたはずだ。
力のある作品ほどレンズの特性には頼っていない。内容勝負だ。
赤城さんの言わんとすることは別にあるのかもしれないが、こんなことを思った。思ったけれど、レンズの性能とか気になっちゃうのが凡人のサガである。
「センチメンタルな旅・冬の旅」…アラーキーこと荒木経惟の最高傑作にして、日本写真史上の最高傑作。センチメンタルな旅はニコン、冬の旅はコニカ・ビックミニFで撮られたらしい。